延岡共立病院では、新病院移転に伴い新たに『心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)』を修得し、心臓リハビリテーションを始めました。
日本は世界でもトップを走る超高齢化社会であり、平均寿命は世界第1位です。
平均寿命の高齢化に伴い、心不全を含む心疾患にかかる患者は増加しつづけ(2018年:死因第2位)、2030年には、心不全患者が大幅に増加し、心不全パンデミックになる事が予測されています。当院では、迫り来る心不全パンデミックを乗り越えるべく、循環器チームを設立し、心不全患者の社会復帰支援、再入院予防を目標に活動していましたが、今回更なる取り組みとして、2020年6月15日より心臓リハビリテーションを開設致しました。
心臓リハビリテーションとは、心疾患や末梢動脈閉塞疾患の患者様が、体力や自信を取り戻し、社会復帰及び再発や再入院の予防を目指して行う包括的なリハビリテーションです。
当院では、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士、社会福祉士の連携のもと、早期の社会復帰に向け、患者様の状態に応じたリハビリプログラムを提案・実施していきます。
また、心臓病は疾病管理や再発予防に向けて自己管理が非常に重要になってきます。その中でいかに病気と上手につきあっていく方法などもお話をさせていただきます。また、各職種が連携し、退院時に必要な疾病管理についても詳しく説明させていただきます。
当院は心臓リハビリ対象疾患の患者様に対して、早期の社会復帰、日常生活動作の獲得を目標にベッドサイドにて早期から心臓リハビリ介入を行っております。
病状が安定していない患者様に対しては、心臓に急激な負担がかからないように心電図や血圧などのメディカルチェックを実施しながら立位や歩行訓練を実施していきます。病状が安定すれば、心臓リハビリテーション室で有酸素運動やレジスタンストレーニングなどの運動療法を実施していきます。また、在宅でも安全に過ごせるように、日常生活指導を行っております。
以下の循環器疾患が心臓リハビリテーションの保険適応疾患となっています。
※年齢制限はありません。
心臓リハビリの有効性は、さまざまな効果が証明されております。その中でも代表的なものを挙げます。
運動能力が向上すると、日常生活における息切れや狭心痛などの諸症状が改善します。運動能力の向上効果は性・年齢に関わらず認められます。
体力が向上する第一の要因です。運動療法を行うと、筋肉の量が増え、質も良くなり、楽に動けるようになります。そのため、同じ労作をしても心臓への負担は少なくなります。
心臓病では自律神経活性が乱れます。これは不整脈や場合によっては突然死とも関係します。症状としては、脈が早くなったり、ドキドキしたりします。また、手足の血管が細くなって疲れやすくなったり、血栓の元になる細胞を活発にさせて血栓塞栓症の原因を作ります。運動療法を行うと自律神経が安定して、動悸や血栓の心配を減らすことができます。
運動療法は血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロール、血糖値、体重などが異常である場合、これらを改善させ、冠動脈硬化症の再発予防に有効です。食事療法を併用すると、さらに有効です。
心臓病の人の手足が冷たいのは、血管が硬くて広がらないことが原因です。運動療法を行うと血管が広がりやすくなり、手足が温かくなります。体のすみずみまで新鮮な血液を運ぶことができるようになるため、筋肉への栄養補給もスムーズになります。これも運動療法によって心臓病の症状がとれる1つの要因です。
運動療法は”生活の質”を改善します。生活の質とはやる気、希望、日常生活の快適さなどのことです。85%の患者様が「運動療法によって仕事への満足度、家庭生活、社会参加、性生活が改善した」と報告されています。
心疾患患者様の約40%が精神的に不安定(うつ状態)になると言われています。精神的なストレスは冠動脈疾患患者様の状態を悪化させ、時には動脈硬化病変を不安定にします。運動療法は不安定な精神状態を改善してくれます。とくに集団で心臓リハビリテーションを行うと効果が高いと言われ、うつ状態が改善するだけで寿命が延びるとも言われています。
研究により6ヶ月間の心臓リハビリにより、心筋梗塞の患者様の3年間の死亡率が52%も減少したことを報告しています。また、慢性心不全に運動療法を単独で行なった研究では生命予後改善効果と再入院率の減少をもたらすことが明らかになっております。このように心臓リハビリは、単に自宅退院、ADL(日常生活活動)の自立や復職にあるのみではなく、再発防止や生命予後の延長までを目指すものです。
リハビリ室
チームカンファレンス
指導風景
訓練風景
研修会風景